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「繭の女・その前後」
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繭子が初めてメールをくれたのは九ヶ月ほど前。
彼女はいわゆるリストカッターだった。
俺に写真を撮ってほしいと言ってきたのだがその理由は次の通り。
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何故傷だらけの私を写真に残そうと思ったのか、
それはその傷を「過去」にして葬ってしまいたくはなかったからなのです。
いずれこのビョーキは治ってしまうでしょう。
けれど「過去」であっても「事実」なのですから、
その「事実」を私は時が経っても決して葬りたくなかったのです。
それを時が経って認められる様に残しておきたいと今は強く思っています。
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それを読んで俺は無条件に撮りたいと思った。
彼女の顔も知らなかったけど。
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そして繭子は俺に会うために遠方からはるばるやって来てくれた。
芝浦〜お台場デートの後ホテルで夜遅くまで撮影、そして添い寝した。
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翌日も彼女が帰る時間ぎりぎりまで一緒に過ごしたという訳だ。
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2004.3/13〜14
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